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2008.11.12

進化とmusicology

そもそも琴(きん)の稽古と琴学の研究自身が、すでに考古学的と重なり合っているのだが、「音楽の起源」を探すとなると、生物学や進化論のモデルにも遭遇することになる。Biomusicology、Evolutionary musicologyなどが、それだ。

もともとダーウィンが著書「人間の進化と性淘汰」のなかで、原始人の求愛行動の過程での愛、嫉妬、勝利などの表現から音楽は生まれたと書いていることがきっかけで、この分野の研究が始まった。このダーウィンの見解については、否定的な異論もあるが、音楽を生物学的な観点から考えることが生まれたわけだ。

そして1991年にNils L. Wallinによって作られた言葉がBiomusicologyだ。

以前、楽器の変遷と生物学的な特質を読み取れないかと思っていたころに入手した論文集"The Origins of Music"では、さらに進化音楽学(Evolutionary musicology)、神経音楽学(Neuro musicology)、比較音楽学(Comparative musicology)へと、さらに分岐している。

Steven Brownのmusilanguageという概念では、音楽と言葉は共通の源をもつという(musilanguageは「音言語」とでも訳すべきか?)。どちらかというダーウィンの説の流れとも言えるだろう。
musilanguageという概念は、造語としてもおもしろいし、それなりに説得力があるように思う。

"The Origins of Music"に収められた論文は、それぞれ異なる視点で書かれた論文が集まっていて興味深い。

音楽というのは、かなり生物の生存条件につながって発生したような気がする。芸術という人間の独特な行為がはたしてどこかで他の生物と際立って異なるようになる境界みたいなものはどこにあるのだろうか?

また絵画や彫刻のような美術にも、このような生物学的な検証がありうるはずだ。しかし、美術の場合、それらは生物の視覚の構造とか、脳の役割ということに集約されがちで、そのような本は多々ある。しかし進化論的なものは見かけない。
美術には、それこそ「性淘汰」みたいなことに関わる役割はもともとあまり無いのかもしれない。人は青春期を中心に音楽を非常に熱心に聴くが、それと同じようには美術作品を鑑賞することはないだろう。

そうすると美術というのは、生物のプリミティブな生存条件というよりは、むしろ社会的条件のなかで生まれたとも考えられるのではないか。社会なくして美術は無いのかもしれない。
しかしそれはラスコー洞窟の壁画のような、1万6千年ほど前の、新しいものしか残っていないから、そのように考えがちであるのかもしれない。つまり、地べたに何かしらのイメージを描いたり、ものを飾ったりするような、原初的な行為はもっと以前からあるはずだ。だからと言って、言葉になる前の、吠えるように発声するような衝動が、視覚的なイメージを描くことにあるというのも想像しにくい。やはり「社会性」を考えたり、音楽的な要素よりも後に生まれてきたものと考えるほうが妥当なのかもしれない。

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